このページでは、IT業界で働く方やこれから働こうと考えている方に向けて、心の健康を守るために知っておいていただきたいことを、私の経験も交えてお伝えします。

IT業界は"病みやすい"業界です

まず知っていただきたいのは、IT業界がメンタル不調に陥る人が多い業界であるということです。

厚生労働省の「令和5年 労働安全衛生調査」によると、情報通信業では32.4%の事業所においてメンタル不調による1ヶ月以上の休業もしくは退職が発生しており、これは全産業平均(13.5%)の2.4倍にも上ります。

これは次点の「学術研究,専門・技術サービス業」の23.4%を大きく上回っており、IT業界はとりわけメンタルケアが重要な領域であると言えます。

出典:厚生労働省「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」

なぜ病みやすいのか

職場や個人差も大きいですが、代表的な要因として次の5つが挙げられます。

長時間労働になりやすい

プロジェクトの納期やトラブル対応、山積する課題の解決のために、長時間の勤務が常態化しやすい傾向があります。

プログラミングに夢中になってつい長く働いてしまうこともあるかと思うのですが、それが日常になると、知らず知らずのうちに疲れが抜けきらない生活に陥ります。

疲れによる判断力の低下から仕事が長引き、セルフケアもままならずさらに疲れが溜まり…といった悪循環に陥り、気づいた時には心身が限界を迎えていたというケースも少なくありません。

特有の身体的な負担がある

長時間座ったままで画面を見続けることが多く、眼や首、肩や腰に負担がかかりやすいです。体と心は密接に繋がっているので、こういった身体的なダメージはメンタルにも強く影響します。

運動不足も深刻な問題です。血流の悪化により、不安や憂鬱感、イライラが強まりやすくなります。

また、日光を浴びる量も不足しがちです。これはセロトニンという重要なホルモンの分泌不足を招き、気力の低下や睡眠障害に繋がります。

コミュニケーションに独特の難しさがある

一部ではコミュニケーションが少なくて済むと言われていますが、複数の関係者と協力しながらシステムを構築する必要があることから、むしろ普通以上にコミュニケーションが求められる業界です。

自分とは全く異なる職種やバックグラウンドの方、意思疎通が取りづらい方との協業が求められる場面も珍しくありません。

特にリモートワークが多い現場では相談や雑談の機会が減り、孤立感が強まりやすいという難しさもあります。

実力主義の色が濃い

技術力がものを言う厳しい世界で、プライベートでも常に学び続けることが求められます。

歳をとるにつれ若い頃ほど学習意欲が保てなくなり、辛くなってきたという話もよく耳にします。特にここ数年はAIの発展も目覚ましく、仕事を奪われる不安を感じている方も少なくないのではないでしょうか。

もちろんこれは終身雇用の崩壊や雇用の流動化などと同様、どの業種にも訪れている変化です。

ただ、IT業界には社会が新しい仕組みを探っている段階からいち早く変化が訪れます。

そのスピード感がチャンスを生む一方で、個人が過剰に対応を迫られることがあるというリスクもある点は、あらかじめ認識しておくと良いかと思います。

不確実性が高い

特にスタートアップや小規模の現場では、急な仕様変更や組織構造の刷新が日常茶飯事です。

上層部が少し前までと全く違うことを言い出したり、一生懸命やっていたことが無駄になったりといったことが重なれば、自信ややりがいを失うこともあるかと思います。

システム障害などの突発的な対応もあり、時にはその不確実性がストレスになります。

予防の重要性について

メンタル不調は回復に時間がかかることも多く、特に予防が重要であるとされています。

キャリアや生活に与える影響が大きいため、まずはリスクを適切に管理することが重要です。

詳しくは以下の、うつ病に関するページにも記載しています。

辛い気持ちが続いているあなたへ。うつ病と、カウンセリングにできること

気分の落ち込みややる気のなさが続く方へ。うつ病とは何か、予防や回復のために知っておいてほしいこと、カウンセリングの役割についてご紹介します。

病まないためにできること

病まないために重要なのは、正しい知識を身につけて実行に移すことです。

生活習慣の改善やストレス管理が基本になりますが、IT業界で働く方には特に下記を行うことをおすすめします。

セルフチェックの習慣化

最も重要なのは、不調を早期に検知して対策することです。

1日の終わりに、今日の調子を記録する習慣をつけておくと良いかもしれません(私はiPhoneの「ヘルスケア」アプリの機能で行っています)。

いつもより調子が下がっていたらそれを無視せず、しっかり休んだり人に相談したりしてください。

運動と日光で身体から整える

とにかく日光を浴びて体を動かしてください。

全く運動習慣が無い方は、散歩やストレッチなどの比較的簡単に取り入れられるものから始めることをおすすめします。

また、長時間の座りっぱなしは非常に危険です。一時間に一回、できれば三十分に一回は立ち上がって体を動かして血を巡らせ、遠くを見たりして目を休めてください。

脳を休める時間をつくる(デジタルデトックス)

定期的にデジタルから離れる時間を設けてください。

常にデジタルに触れることで、あなたの眼や体、特に脳は想像以上の負担を強いられています。

半日だけでもスマホ・PCを触らない時間をつくってみると、「脳が楽だな」と実感できるかと思います。

IT業界の外に批評されない居場所を持つ

能力や成果で判断されない場所に自分の居場所を持つことはとても大切です。

IT業界は独特の文化があり、その業界の人とばかり関わることはある種のリスクを伴います。

さまざまな価値観、生き方があることを感覚として知っておくことがあなたを救うかもしれません。

時には転職も視野に入れる

環境が合わないと感じたら、会社や業界を変えるのも選択肢の一つです。

あなたとの相性が悪い環境や、そもそも健康を保って働くのが難しい環境は、確実に存在します。

あなたが安心して、健やかな心で働ける場所を見つけてください。

おわりに

一番大事なのは、あなたという最も大切なシステムが健全に機能し続けることです。

働くことがあなた自身の耐久テストになってしまわないよう、丁寧に優しく運用してあげてください。

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